クラウドストレージやファイル転送サービスを選ぶとき、仕様表にはほぼ必ず「SSL 256bit 暗号化」の一行があります。見慣れた言葉ですが、SSL とは何か、256bit とはどういう意味か、なぜサービスによっては AES 256bit の行まで書かれているのか、と聞かれると答えに詰まることが多いはずです。本記事ではこの三つの言葉を一度に分解して解説します。基礎編はこちら:SSL 256bit と AES 256bit 暗号化とは?なぜファイル転送に暗号化が必要なのか?本記事はその続きとして、詳細と確認方法を扱います。
まず、よく飛ばされる事実から。SSL と TLS は同じものではありません。SSL は旧世代の転送暗号化プロトコルで、後継の TLS(Transport Layer Security)にすでに置き換わっています。今アクセスする https サイトはすべて TLS を使っています。それでも検索や仕様書に「SSL」と書かれるのは、この名前が深く浸透し、転送暗号化の通称になったからです。ですから「SSL 256bit」は「TLS で転送し、鍵長は 256 ビット」と読み替えるのが正確です。
では 256bit とは何か。暗号鍵の長さのことです。ビット数が大きいほど、総当たりで試すべき組み合わせは指数関数的に増えます。256 ビットの組み合わせ数は、現在の計算能力で列挙することが現実的でないほど膨大で、銀行や政府機関も採用する等級です。簡単に言えば、256bit は現在「商用として十分に安全」とされる標準の長さです。ただし注意点があります。これは「鍵がどれだけ強いか」を示すだけで、「鍵が正しい場所にかかっているか」は別問題です。次に、その最も混同されやすい点を取り上げます。
SSL と AES、どちらも 256bit と書かれていますが、同じ暗号化ですか?違います。SSL/TLS が暗号化するのは「転送中」のデータ、ファイルがパソコンからサーバーへ届くまでの区間です。AES が暗号化するのは「保存中」のデータ、ファイルがサーバーのディスクに置かれている間です。どちらも 256 ビットの鍵を使いますが、守る段階が異なります。移動中に TLS がなければ傍受の恐れがあり、保存時に AES がなければディスクを持ち出されれば読めてしまいます。完全なサービスには両方が必要で、選ぶときはこの二行を分けて確認してください。二つの暗号化の組み合わせ方については転送暗号化と保存暗号化を10分で理解するで詳しく解説しています。
転送暗号化が成立するには、「証明書」も必要です。証明書は認証局(CA)が発行し、「接続先が本当にその会社であること」を証明します。アドレスバーの鍵アイコンを開くと表示されるのがそれで、発行した認証局、有効期限、対応プロトコルが書かれています。無料証明書と有料証明書で暗号化の強さに違いはありません。違うのは検証の等級です。無料はドメインの所有確認のみ、有料は組織の実在確認や保証条項が付くことがあります。利用者にとっての要点は、証明書が有効で、期限切れでなく、正しいドメインに発行されていることです。
自分で確認する方法は簡単で、十秒でできます。第一に、アドレスが https で始まり、鍵アイコンがあること。第二に、鍵をクリックして証明書を見ること。どの認証局が発行したか、有効期限、対応プロトコルが書かれています。第三に、「全ページ」が https かどうかです。サービスによってはログインページだけ暗号化され、実際にファイルを送るページがそうでない場合があり、その区間は無防備です。
もう一つ、見落とされがちな詳細がバージョンです。TLS 1.0 と 1.1 は暗号方式の弱点が判明し、主要ブラウザで廃止済みです。現在の安全ラインは TLS 1.2、最新は 1.3 で、ハンドシェイクも高速で安全です。サービスを選ぶときは「SSL」と書いてあるかどうかより、TLS 1.2 以上に対応しているかを確認してください。バージョンを明記できる事業者は、たいてい保守にも真剣です。
よくある質問
Q:256 ビットの暗号化は、今でも安全ですか?
A:安全です。実際の情報漏えいの多くは暗号が破られたのではなくアカウントの乗っ取りが原因です。そのため暗号化に加えて、アカウントと権限の管理も同じくらい重要です(参考:なぜクラウドストレージに IP 制限が必要なのか?)。
Q:SSL 証明書が期限切れになるとどうなりますか?
A:ブラウザが警告を表示し、接続は信頼されなくなります。企業にとっては玄関先に「このサイトは安全ではありません」と掲げるようなものです。証明書が期限切れのサービスには、大事なファイルを送らないでください。
Q:顧客にファイルを送るときも、この暗号化は必要ですか?
A:必要です。むしろ最も弱くなりがちな部分です。メールの添付やチャットアプリで送ると、ファイルが自分の管理を離れた時点で暗号化も記録もコントロールできません。TLS 転送暗号化があり、権限設定とアクセスログの保存ができるクラウドストレージで共有してこそ、完全な渡し方と言えます。
本記事を、サービス選びのチェックリストに凝縮します。全ページが https で、ログイン画面だけではないこと。TLS 1.2 以上に対応していること。証明書が有効で、正規の CA が発行していること。仕様表で転送暗号化と保存暗号化が分けて書かれていること。そして暗号化に加えて、アカウントと権限の管理(IP 制限、権限の階層化、アクセスログ)があること。五つすべてを満たしてこそ、ファイルは移動中も保管中も本当に施錠されていると言えます。
あるサービスの暗号化が本当に機能しているか確かめる最も確実な方法は、自分で試すことです。CloudFiles は転送時に全面的に SSL/TLS 暗号化を行い、保存時は AES 256 ビットで暗号化します。年額制でユーザー数は無制限です。まずは 1 か月の無料トライアルでファイルを一つアップロードとダウンロードし、本記事のチェックリストに沿って鍵アイコンと証明書を自分の目で確認してみてください。